戦前・戦中の「失敗の本質」が、現代日本の巨大プロジェクトや危機管理においてどのように反復されているか?

戦前・戦中の「失敗の本質」が、現代日本の巨大プロジェクトや危機管理においてどのように反復されているか、具体的な事例を対比させることで浮かび上がらせます。

歴史は全く同じ形では繰り返しませんが、**「韻を踏む(似た構造が現れる)」**と言われます。以下の4つのケーススタディをご覧ください。


 

ケース1:補給軽視と精神論

 

【過去】インパール作戦 (1944年) vs 【現代】東京オリンピック・パラリンピック (2021年)

比較項目 インパール作戦 東京2020大会
計画の前提 「敵の糧食を奪えばよい(ジンギスカン作戦)」という希望的観測 「温暖な気候」「復興五輪」という実態と乖離したスローガンと招致。
兵站 (ロジ) 補給路(あぜ道)の無視。牛に荷物を運ばせ、食料にするという杜撰な計画。 膨れ上がる経費、ボランティア頼みの運営、不十分な暑さ対策(朝顔、打ち水)。
決定要因 牟田口司令官の功名心と、それを止められない組織の空気。 責任の所在が不明確なまま、中止という選択肢が封印され「開催ありき」で突き進んだ。
共通点 「客観的なリソース不足」を「精神論(おもてなし・絆)」でカバーしようとして現場が疲弊する構造。

 

ケース2:技術への過信とガラパゴス化

 

【過去】零式艦上戦闘機 (零戦) vs 【現代】日本の家電・携帯電話産業

比較項目 零戦(ゼロセン) 日本の家電・ガラケー
初期 世界最高水準の航続距離と格闘戦能力で圧倒。 世界最高水準の技術力、高機能、小型化で市場を席巻。
中期以降 防弾装備(人命保護)や無線(システム)を軽視し、「軽量化・運動性能」という一点のみを磨き続けた。 ユーザー体験(UI/UX)やOS(エコシステム)を軽視し、「高画質・多機能」というスペックのみを磨き続けた。
敗因 米軍の「2機1組の戦法」「重装甲」「レーダー連動」というシステムに敗北。 Apple等の「アプリ経済圏」「使いやすさ」というプラットフォームに敗北。
共通点 「個別の技術(職人芸)」に固執し、「環境の変化(ゲームチェンジ)」に対応できず、勝利の定義を見誤る。

 

ケース3:情報の隠蔽と縦割り行政

 

【過去】ミッドウェー海戦 (1942年) vs 【現代】福島第一原発事故 (2011年)

比較項目 ミッドウェー海戦 福島第一原発事故
第一報 主力空母4隻喪失という壊滅的被害を**「大勝利」と発表**。 炉心溶融(メルトダウン)の事実を直ちに公表せず、「炉心損傷」と言い換え
情報共有 海軍の失敗を陸軍や政府中枢にさえ隠蔽。国としての戦略修正が遅れた。 官邸、東電、現場の間で情報が錯綜(SPEEDIデータの非公表など)。住民避難に混乱を招いた。
組織防衛 「無敵皇軍」のメンツを守るため、事実をねじ曲げた。 「原発安全神話」を守るため、あるいはパニックを恐れ、最悪のシナリオを直視しなかった。
共通点 「不都合な真実」を組織内で共有・処理できず、問題を矮小化して発表することで、被害を拡大させる。

 

ケース4:戦力の逐次投入とサンクコスト

 

【過去】ガダルカナル島の戦い (1942年) vs 【現代】高速増殖炉「もんじゅ」 / 公共事業

比較項目 ガダルカナル島 高速増殖炉「もんじゅ」
対応 敵戦力を過小評価し、小規模な部隊を小出しに投入しては全滅を繰り返した(一木支隊など)。 事故と不祥事でほとんど稼働していないにもかかわらず、予算を小出しに投入し続け、30年で1兆円以上を費やした。
撤退判断 早期撤退すれば被害は少なかったが、「これだけ犠牲を出したのだから」と固執。 技術的・経済的合理性が破綻しても、「これだけ投資したのだから」「国策だから」と計画を維持。
共通点 サンクコスト(埋没費用)の呪縛。 過去の投資や犠牲を無駄にしたくない心理が働き、損切り(撤退)の決断ができず、傷口を広げる。

 

まとめ:なぜ「歴史」は繰り返されたのか

 

これらの事例を並べると、戦前と現代で、日本社会のOS(オペレーティングシステム)が変わっていないことが痛感されます。

  1. 現実(データ)よりも「空気」や「願望」が優位に立つ。

  2. システムやロジスティクスよりも、現場の「個人の能力」に依存する。

  3. 失敗を認めて方針転換(撤退)することを「悪」とする。

戦後の日本は、平和国家として生まれ変わりましたが、**「危機に直面した時の組織の挙動」**においては、驚くほど戦時中のスタイルを保存しています。

これらの分析を踏まえた上で、最後のアプローチとして:

「未来への視点:どうすればこの“呪縛”から脱却できるのか?」

(希望のある動きや、これからの世代に必要な考え方)についてお話しして、このテーマを締めくくりましょうか?