いい問い。実際、 北方四島(択捉島・国後島・色丹島・歯舞群島)の帰属や、ソビエト連邦/ロシア連邦による占領が「国際法上違法かどうか」をめぐっては、国際社会(または国際法学者)の間でも見解が分かれてきました。以下に、どのようにみなされてきたかを整理します。
✅ 「違法占拠」「日本固有の領土」とする立場(日本など)
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日本政府の公式立場は、「北方四島は日本固有の領土」であり、1945年以降のソ連/ロシアによる占拠は「不法占拠」である、というものです。(外務省)
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その根拠として、
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多くの日本の研究者・専門家も、この「不法占拠/固有領土論」を支持しており、国際法の原則や歴史的条約の観点から根拠を示すものが多い。(SPF)
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この立場の中では、ソ連・ロシアの主張の根拠とされる1945年の ヤルタ協定 は、秘密協定であり、かつ日本は正式な当事国ではなく、国際法的に日本を拘束する根拠にはならない、という批判がある。(北方町公式サイト)
→ つまりこの見方では、「日本が降伏した後の占領」は国際法上の正当性を欠く「違法占拠」とされる。
⚠️ 一方で、正当性を主張する/争点ありとする見解(ロシアおよび一部国際法学者など)
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ロシア(およびロシアに近い学者)の主張は、「1945年のヤルタ協定および第二次世界大戦の戦後処理における国際決定」に基づき、北方四島(ならびに千島列島を含む一帯)はソ連に移された、というものである。(SPF)
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つまり、「占領ではなく、戦争終結後の合法的な領土移転だ」「ロシア(ソ連)の行為には国際法上それなりの根拠がある」との立場。(SPF)
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また、一部の国際法の分析は、「この問題は――当時の条約や協定、戦後処理、その他歴史的・政治的事情の複雑さゆえ――国際法の枠組みだけでは“明確な唯一の正解”を出すのは難しい」と論じるものもある。たとえば、ある論文では「現在の国際法下における諸協定では、日ロだけでこの問題を最終的に決めるのは困難」との結論が示されている。(ResearchGate)
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さらに、同じく国際法の専門家の中には、「たとえ元々日本領だったとしても、70年以上にわたるロシアの実効支配と、そこに住んでいる住民の現在の状況を考慮すれば、『既成事実』としてある程度尊重されるべき」という現実主義的な視点を示す者もいる。(eTD)
→ この見方では、「ソ連/ロシアの占拠=違法」と断言するのは乱暴で、「紛争状態の領土」「法的・歴史的にグレー」の領域とされる。
🌐 国際社会・第三国(米国など)のスタンス
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アメリカ合衆国政府 は、長年にわたって日本側の立場を「支持」してきた。すなわち、北方四島は日本固有の領土、現在のロシアによる占拠は違法であるという見解を支持。(外務省)
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ただし、アメリカ自身も戦後、複雑な国際構造の中で交渉の当事国や主体ではなく、あくまで「支持」の域にとどまる。サンフランシスコ条約後の解釈などに関しては、立場が複雑であったことが、いくつかの文献で指摘されている。(ウィキペディア)
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また、国際社会全体としては、両国による平和条約締結交渉の継続を促す声が根強い—つまり、「違法か合法か」を強く断ずるよりも、「現状を踏まえた外交と実務的解決」を支持する傾向もある。(日本国際問題研究所)
🎯 なぜ今なお「結論」が出ていないのか
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歴史的な条約(1855年、1875年など)や戦後処理(サンフランシスコ条約、ヤルタ協定など)が複数あり、それぞれ解釈が異なる。どれを正当な根拠とみなすかで、結論が変わる。(SPF)
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また、「実効支配」「住民の定住」「経済・軍事インフラの整備」など、時間の経過がロシア側の既成事実化を強めており、それが「法理」と「リアリティ」の乖離を生んでいる。(日本国際問題研究所)
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さらには、国際社会が関与する法的な仕組み(たとえば国際裁判所による判断など)に付託されていないため、「国際的な判決」で確定した法的地位が存在しない。つまり、あくまで「当事国間の交渉と見解の対立」が続いている状態。(JIIA)
✅ ざっくり整理すると…
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日本およびそれを支持する勢力 ⇨ 「違法占拠」「日本固有の領土。ソ連/ロシアの主張は法的根拠がない」
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ロシアおよびそれをある程度支持する/将来の折衝において現実主義的立場をとる勢力 ⇨ 「合法的(または少なくとも争点あり)の領土移転」「紛争領域」
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国際社会としては、判例や明文の国際合意による“最終判断”はなく、「両国交渉による平和解決」を求めるスタンスが主流
もしよければ、国際法学者の最近の代表的な論文から「占拠は合法か違法か」に関する学術的分析をいくつか紹介するよ。これを読むと「なぜ結論が出ていないか」がよりクリアに分かる。やる?
